「北村 陽」天才少年チェリスト 2017年 中学1年生:大嶺光洋のブログ2

 平成29年(2017)、中学生少年の快進撃が止まらない。彼等(二人)はついこの前の3月までは小学生の児童だったのだから、まだ「神童」と呼ばれるのも頷ける。 

 卓球の「張本くん」中1が、世界選手権でベスト8に進出したことで世界の注目を浴びたのはつい先日(6月3日)の話。

 今(6月下旬)は将棋の中学3年生「藤井聡太くん・四段」がプロのスタートを切って以来の連勝新記録でマスコミは大騒ぎだ。

 実はクラシック音楽の世界にも、中1で彼等に劣らない「大天才」がいることを私が知ったのは、恥ずかしながらこの5月15日テレビBS「エンター・ザ・ミュージック」を視聴してからだ。慌てて検索すると、チェリスト「北村陽くん」はインターネットの世界ではもう有名人だった。

 このブログを書き始めた6月23日深夜、彼のことをあれこれ検索中にニュースが飛び込んで来た。世界のコンクールを制覇する時が来るのに、それほどの時間は要しないだろうと思っていたところへ、このニュースだ。

 世界の音楽3大コンクールの一つ、チャイコフスキー国際コンクールの姉妹コンクールで「若い音楽家のためのチャイコフスキー国際コンクール」チェロ部門1位「北村陽くん」の報!  彼のプロフィールの前にこのコンクールについて書くことにする。

【若い音楽家のためのチャイコフスキー国際コンクール

 主催者はチャイコフスキー国際コンクール入賞者連盟。ジュニア音楽コンクールでは世界の頂点に立っている。8歳以上17歳未満が対象。開催都市は固定せず、希望都市と主催者の協議で決定し共催する、ワールドカップ方式。審査部門はチェロのほか、ピアノとヴァイオリンがある。

 1990年の創設で今年は10回目。2010年から4年に1度ロシアで開催することが決まったが、中間年は希望都市と主催者の協議でロシア国外での開催が認められている。

 今年はカザフスタンの首都アスタナで6月21~22日にかけて最終審査が行われた。日本人のチェロ部門優勝者は二人目となる。(24日、ヴァイオリン部門で東京の中3河井勇人くんが1位)

 【プロフィール】北村 陽(きたむら よう)

⚫平成16(2004)年、兵庫県西宮市生まれ。

⚫4歳からチェロを学び始める。ギア・ケオシヴィリ、太田真実、山崎伸子の各氏に師事する。

⚫優勝した国内コンクール:「大阪国際音楽コンクール」、「熊楠の里音楽コンクール」、「全日本芸術コンクール全国大会」、「泉の森ジュニア・チェロ・コンクール」。

⚫2012年(小学校2年生)「佐渡裕とスーパーキッズ・オーケストラ」最年少団員となる。※8歳

佐渡裕とスーパーキッズ・オーケストラ》

 2003年、兵庫県立芸術文化センターの先行事業(センター開設前)として創設。

 芸術監督はオーストリアのニーダーエスライヒ州立「トンキュンストラー管弦楽団」の音楽監督としてウィーンほかで活躍する「佐渡 裕:さどゆたか」氏。

 厳しいオーディションで選考された、将来演奏家を目指す小・中・高校生のジュニア弦楽器奏者45名前後(2017年現在)で編成されている。

 週末の合同練習や夏季合宿を経て、8月の定期演奏会、2月のニューイヤー・ミニコンサート、毎夏の震災被災地慰問演奏会のための東北と熊本の各地訪問など大忙しである。

 2012年には東北震災支援感謝のためパリのユネスコ本部を訪れ演奏を披露。2014年5月は結成10周年記念演奏会を全国5都市で開催した。

⚫2013年(小3)5月 伊丹シティ・フィルハーモニー管弦楽団サン=サーンス:チェロ協奏曲 第1番 第3楽章を共演。※9歳

⚫2013年( 小3)8月 関西フィル・ハーモニー管弦楽団(指揮・藤岡幸夫)とサン=サーンス:チェロ協奏曲 第1番 第3楽章を共演。

⚫2014年(小4)4月 日本テレビ「nuws every」で「佐渡裕とスーパーキッズオーケストラ」の最年少メンバーとして密着取材を受け、その模様が放送された。※10歳

⚫2014年(小4)5月 テレビ朝日題名のない音楽会」に出演。バッハ:無伴奏チェロ組曲 第4番「ジーグ」を弾いた。

⚫2014年(小4)10月 マグノリア・サロンコンサートに出演。実質上の「初リサイタル」。主催・阪急電鉄。曲目は ①ハイドン:チェロ協奏曲 第1番 第1楽章 ②フォーレ:エレジー ③プロコフィエフ:マーチ ④ショパン:序奏と華麗なるポロネーズ。ほか ピアノ・鳥羽亜矢子。マグノリアホール(大阪・池田市

⚫2014年(小4)11月 テレビBS「エンター・ザ・ミュージック」に出演、関西フィル・ハーモニー管弦楽団(指揮・藤岡幸夫)とハイドン:チェロ協奏曲 第1番 第1楽章を共演。

⚫2015年(小5)4月 東京交響楽団(指揮・藤岡幸夫)「こども定期演奏会」に出演、ハイドン:チェロ協奏曲 第1番を共演。東京の「サントリーホール」にデビュー。※11歳

⚫2015年(小5)8月 関西フィル・ハーモニー管弦楽団(指揮・藤岡幸夫)とフォーレ:「チェロと管弦楽のためのエレジー」を共演。大阪の「ザ・シンフォニーホール」にデビュー。

⚫2016年(小5)1月 テレビBS「エンター・ザ・ミュージック」に出演(2015録画)、ピアニスト・横山幸雄氏とサン=サーンス:「白鳥」、リムスキー・コルサコフ:「熊ん蜂の飛行」を共演。関西フィル・ハーモニー管弦楽団(指揮・藤岡幸夫)とフォーレ:「チェロと管弦楽のためのエレジー」、エルガー:「愛のあいさつ」を共演。

⚫2016年(小5)年初 フルサイズのチェロ・名器カッシーニ(1668年製)を貸与される。これまでは4分の3サイズを使用していた。貸与主は有名演奏家に高額な名器を貸与していることで知られる京都の「上野製薬」。

⚫2016年(小5)3月 関西フィル・ハーモニー管弦楽団(指揮・藤岡幸夫)とハイドンのチェロ協奏曲 第1番 全曲を共演。

⚫2016年(小6)8月 草津夏期国際音楽アカデミーを受講(遠山基金奨学生)。2週間にわたってレッスン、聴講、アンサンブル、コンサート鑑賞など充実した音楽生活を送る。チェロの講師は世界的チェリスト:ヴォルフガング・ベッチャー氏。※12歳

⚫2016年(小6)11月 2回目のリサイタルを開催。曲目は ①バッハ:無伴奏チェロ組曲 第3番 ②ボッケリーニ:チェロ・ソナタ第6番より ③カサド:無伴奏チェロ組曲 ④ポッパー:ハンガリー狂詩曲。ほか ピアノ・鈴木華重子。ザ・フェニックスホール(大阪市・北区)

⚫2017年(中1)5月 テレビBS「エンター・ザ・ミュージック」に出演。①バッハ:インベンション 第8番 ヴァイオリン内尾文香(芸大3年) と共演。②関西フィル・ハーモニー管弦楽団(指揮・藤岡幸夫)とチャイコフスキー:「ロココの主題による変奏曲」を共演。※13歳

⚫2017年(中1)6月     第10回「若い音楽家のためのチャイコフスキー国際コンクール」第1位。(カザフスタン・アスタナ) ※ 最終審査では、チャイコフスキーの「ロココの主題による変奏曲」を演奏した。

⚫2017年(中1)7月   「岸和田城夏の音楽祭」に招かれてリサイタルの予定。曲目は ①チャイコフスキーロココの主題による変奏曲 ②バッハ:無伴奏チェロ組曲 第4番 ③パガニーニロッシーニの主題による変奏曲 ほかを用意している。ピアノ・鈴木華重子。岸和田市立自泉会館

【こどもの域を脱した演奏家、北村 陽さん】

 私の鑑賞リストにあるチェロ曲の二重丸は、三大協奏曲(ハイドン2番、シューマンドヴォルザーク)、ドヴォルザークピアノ三重奏曲ドゥムキー」、シューベルト:アルペジョーネ・ソナタブルッフ:コル・ニドライほか多数。別格で、カタロニア民謡「鳥の歌」は名演に接すると胸が熱くなる。

 というように、私はチェロの音が昔から大好きだ。私の心を落ち着かせてくれる癒しの音に感じている。その音を小学校4~5年生(10~11歳)の「こども」が、サイズの小さな楽器で出せる(弾ける)筈がないと思っていた。ところが、現実にハイドンエルガー、そして、フォーレなどを視聴すると、納得せざるを得ないどころか、感動さえ覚えたのである。

 運指の正確性、音程の安定性、ビブラートの自在性、そして、自然な表現技法に基づく「うたごころ」、いわゆる音楽性の豊かさなどが、私にはヒシヒシと伝わつて来た。        彼はサンプルを聴くと即座に、楽譜には書かれていないテンポの「揺れ」や、アーティキュレーションの「技」を自分のものにしてしまう天才なのかもしれない。

 どのような教育をしたら、このような「こども」が育つのだろうか。的確な指導があったことは間違いないだろう。しかし、天性のものが大きいと思われる。もしかすると、これからの教育が、より重要になってくるのではないだろうか。

 それにしても、彼を囲むサポート陣の凄さには驚嘆する。複数の一流指揮者が彼にチャンスを与え続けてキャリア・アップをサポートする一方、指導者や後援者の多彩さには眼を見張らされる。この「人」との出会いは彼一人の才や人懐こさだけでは得られないと思う。原点たるご両親の情報がさっぱり伝わって来ないのが不思議でもある。

 さて、世界のチェロ界には名うての強者(つわもの)がひしめいている。その中を突き抜けるためには、彼をどう導けばよいのか? 良い指導者に恵まれることを祈るばかりである。

 ある指導者は言わでもがなと断りながら、こう言っている。ただチェロの音だけでは駄目。陽くん独自の音でなければならない。1音1音に陽くんの《ニュアンス》が必要なのだ。これにはビブラートが大きく関わっていると考えられる。現在をどのように変化させて行くかが課題ではなかろうか。《アゴーギグ》については、チェロ以外の多くの楽器や声、それもソロ(協奏曲を含む)を「繰り返し」聴き込むことが重要。《デュナーミク》は、大袈裟なくらいでやっと聴く人に伝わる。《フレージング》は、曲に深い想いを抱くこと、すなわち、ストーリーを思い描くと良い。そして、十分に息を吸い込んで、その想いを大いに、克つ細心に歌うことだ、と。

 ところで、私は7月21日、3回目の「北村陽リサイタル」を生で聴くために、東京から岸和田まで関空経由で往復する。その感想記をホテルで纏め、このブログを更新したいと考えている。

 ※ 私のブログ「更新」は、訂正・加筆を意味しています。新規に発信する訳ではありません。

 

 ※ 筆者プロフィール:大嶺光洋(おおみね  こうよう)。公益社団法人「日本演奏連盟」所属・声楽バリトン。平成24(2012)年、72歳で「奏楽堂・日本歌曲コンクール」入選(ファイナリスト) & 審査員特別賞。平成26(2014)年、同コンクール・審査員特別賞。 現在、ピアノ・宮崎芳弥(みやざき よしみ)とデュオ活動中。